新年のご挨拶でも触れましたが、2023年はコンスタントにコラム・ブログ等を投稿していきたいと思いますが、今回は2023年1回目の投稿となります。


「不動産鑑定士の仕事」として、最初の投稿では「不動産鑑定士の業務は一般の方に馴染みがない」旨を書きましたが、一般の方に接する可能性が高いのはやはり「遺産分割」かと思います。説明にあたり簡単なモデルケースを想定し、以下進めていきたいと思います。。


・父Aさんは数年前に死去、Aさんの妻であるBさん、AB夫妻の子供である長男Cさん、長女Dさんというご家族

・今般Bさんが亡くなったことにより、相続人をCさん、Dさんとする相続が発生

・Bさん名義であった土地建物に、BさんとCさんご家族が同居していたが、Dさんは結婚を機に別の場所に居住している

・相続財産としては、Bさん名義であった土地建物(Cさん自宅)、その他は預貯金1,000万円のみ


遺産分割において、相続人がこのように主張します。

Cさん:母B名義であった土地建物に、自分は家族と居住しているから、自分は土地建物を相続したい。預貯金1,000万はDにそのまま渡す。

Dさん:相続人は子供2人だから、相続財産は完全に折半よね。預貯金は1,000万だけど、兄さんが居住している土地建物は2,000万もするじゃない。不公平よ。

Cさん:いやいや、この土地はそんなに人気がある土地ではないし、建物は古いから価値はない。この土地建物は1,000万の価値しかないから、預貯金1,000万と同額だ。

Dさん:最近は地価も上昇しているというし、2,000万はするわよ。相続財産は合計3,000万、私の法定相続分は1,500万だから、預貯金1,000万に追加で500万頂戴。

と、交渉は平行線のまま、また決裂する場合には遺産分割が進まないケースが多々あります。

今までは、遺産分割の期限は無期限であったことから、当事者の遺恨が深い場合、遺産分割が放置されるケースがありました。相続登記義務化(3年以内)、民法改正(令和5年4月施行)に伴う法定相続分の遺産分割(10年以内)、といった法令改正により今までのような遺産分割放置は少なくなるとは思いますが、遺産分割による争い(相続=争族)は引き続き発生すると思われます。


さて、ではなぜこのような遺産分割の争いが生じるのでしょうか?

 ・ 相続財産が、現金・預貯金・有価証券(株式)等であれば、金額の把握が簡単であり、遺産分割は容易

 ・ 相続財産に不動産が含まれていても、売却して現金化すれば、同じく遺産分割は容易

しかしながら、不動産を継続使用(売却せず居住・保有し続けること)する場合には、売却する訳ではないので価格の把握が簡単ではなく、また当事者によって相続不動産の価格感が異なる場合に、遺産分割に争いが生じる可能性が高くなります。


裁判所公表資料によれば、令和3年の遺産分割事件は総数6,934件ですが、そのうち遺産金額が5,000万以下の遺産分割事件は5,316件であり、全体の約4分の3はいわゆる庶民の相続案件と考えられます。遺産金額5,000万は庶民ではないと思う方もいるかと思いますが、大都市圏の場合、居住用の不動産だけで3,000~4,000万することはザラにありますので、遺産金額5,000万も庶民の相続であると言ってよいと思います。

遺産分割調停を申し立てるにあたって多くの方は弁護士に委任するかと思いますが、弁護士費用は着手金と成功報酬合わせて少なくとも数十万~はかかります。必ずしも弁護士を立てる必要はなく、自身で調停を申し立てることは可能ですが、弁護士を立てる方が多いのではないでしょうか。

遺産分割調停において、不動産価格が争点となる場合には、申立人・相手方双方が不動産の価格について主張を行いますが、上記例のCさん・Dさんのように価格の乖離が発生しております。裁判所に提出する不動産価格の査定根拠については、不動産会社が無料で査定書を作成してくれることがほとんどで、実際は不動産鑑定士の出番は多くないのですが、理由として以下が考えられます。

 ・ 弁護士費用だけでも金銭的負担があり、別途不動産鑑定士に費用を払って調停を進めることは、更に金銭的負担が増える

 ・ 庶民の相続、特に対象となる不動産が戸建住宅やマンションであり、不動産価格が高くない場合には、経済的メリットが高くはない

 ・ 戸建住宅やマンションの場合、査定自体もそこまで難しくないため、不動産会社の無料査定で対応できるケースが多い


といった理由により、私自身も個人の相続案件に関する評価を正式に受任することは多くはないのですが、経済的利益や資金負担は別として、不動産鑑定士に相談はすべきだと思っております。その理由については、次回にご説明したいと思います。